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サンクコスト(埋没費用)とは何か?【ファイナンス初級】

 

サンクコスト(埋没費用)に関するクイズ

最初にサンクコストに関するクイズを出題します。解答は記事の一番下です。

Q. 当初、1億円の利益を見込み、これまで2千万円の開発費をかけた開発中のボールペンがあります。開発部から予期せぬ問題が発生したため、解決のために1千万円の追加投資が欲しいと言われました。
ファイナンスの観点から適切な解答を選択してください。

注:金額はすべて現在価値とする。現在価値がわからない方は無視してください。

A) 1億円以上の利益があるなら追加投資する。
B) 2千万円以上の利益があるなら追加投資する。
C) 1千万円以上の利益があるなら追加投資する。
D) 3千万円以上の利益があるなら追加投資する。

 

サンクコスト(埋没費用)の意味

サンクコスト(埋没費用)の意味

サンクコストとは、過去に使用し、かつ今後回収できる見込みのない費用です。

例えば、自社で開発中の新製品があり、開発途中でより安価で高性能な競合品が発売された場合、もはや開発当初想定していた利益を得るは不可能でしょう。

発売できたとしても、ほぼすべてのシェアを競合に取られてしまえば、開発にかかった費用はすべてサンクコスト(埋没費用)です。

サンクコスト(埋没費用)の事例と問題

サンクコスト(埋没費用)で有名な事例は、超音速旅客機「コンコルド」です。超音速旅客機コンコルドは、イギリスとフランスの航空機メーカーが共同で開発した高速旅客機です。飛行機での移動時間が大きく短縮されると期待されていました。

サンクコスト(埋没費用)の事例と問題
出典:STUART NATHAN(2018)THE ECONOMIST

しかし、コンコルドは運用にあたって多数の課題があることがわかりました。例えば、長距離飛行に向いていない、騒音が一般航空機の比ではない、収容可能な乗客数が少ない、長距離滑走路が必要などです。

重要なのは、上記問題点などから、開発過程で開発費用を回収できないことがわかっていた点です。すなわち、開発に成功して販売できても赤字です。通常、開発費用を回収できないのであれば、早く開発を中止し、少しでも開発費用を抑えるべきでしょう。

しかし、このコンコルドは開発を中止しませんでした。なぜなら、それまでに開発で要した費用があまりにも大きかったからです。
皆さんもギャンブルなどで「〇〇円も使ったのに今更引けるか」と思って追加でお金をつぎ込んだことはありませんか?

そこには、これまでこんなにお金を使ったので最後までやりきらないといけないという錯覚があります。人間だれしもこのような考えをしてしまいますが、これが客観的な判断を妨げます。

この錯覚は埋没費用効果と呼ばれますが、コンコルドの事例があまりに有名なため、コンコルドの誤り(concorde mistake)やコンコルドの呪縛・呪いとも呼ばれています。心理学や行動経済学でも使用されます。

ファイナンスを学ぶとき、サンクコスト(埋没費用)は比較的初めに出てきます。その理由は、サンクコストの考え方にファイナンスの本質があるからです。

ファイナンスは、会計と異なり、現在以降のお金についてのみ考えます。これまでの損益を対象としません。これからいくらの投資をし、いくらの損益をもたらすかを考えます。これまで100億円の投資をしたといっても、ファイナンスの観点からは何も関係ありません。

 

上記は概念と一例のみでしたが、グロービス学び放題で視聴できる「サンクコスト」の動画では、キャッシュフローを交えて説明されています。

クイズの回答

正解は、
C) 1千万円以上の利益があるなら追加投資する。
です。

ファイナンスやサンクコストの考えでは、当初の想定利益1億円やこれまでに使った開発費用の2千万円は関係ありません。これから追加投資する1千万円とそれがもたらす損益のみを考えます。1千万円を上回る利益があればよいのです。

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